手帳好き界隈には「手帳会議」という概念がある。
翌年の手帳をどうするかの検討が多いが、任意のタイミングで手帳の使い方を振り返って何をどう使っていくことにするのか考えることを指している。「会議」とは言うが、自分と自分の手帳の間の対話であり、要するにひとりで考えるものだ。その内容はもちろん手帳に書く。
そして手帳というのは日々の生活を記録したり管理したりするものなので、手帳の在り方を問うということは、同時に自分の生活そのものを問うことでもある。手帳会議というのは自分の生活を設計する時間と言えるだろう。
かつて手帳術を追い求めていた頃は「手帳会議」というワードをそれはもう頻繁に目にしたが、手帳界隈から離れたら全く見かけなくなってしまった。なので今まで忘れていた。
今は紙の手帳自体ほとんど使っていないので、手帳会議というのはやる機会がない。しかし、それと同じようなことはやっている。「デジタルツールはどれをどう使うべきか」という自問自答だ。
手帳会議というものの良いところの一つが、その行為に「手帳会議」という名前がついていることだと思う。そのことによって手帳会議は手帳界隈に浸透し、毎年やり方をいろいろ変えてみたいタイプの手帳好きならば当たり前のようにやっている。(特に女性が多い印象。)
一方でデジタルツールの検討についてはいまいちこれという名称が浮かばない。そもそも、ツールのことをなんと呼ぶべきかも曖昧だ。EvernoteとかWorkflowyとかScrapboxとかObsidianとかNotionとかHeptabaseとかその辺のアプリケーションのことなわけだが、「手帳」みたいにズバッと万人に通じて表記揺れが起こらない総称は思いつかない。「デジタルツール」と言うと、確かにこの界隈では「ノート・カードなどのアナログツールに対するデジタルツール」という意味で通じるが、言葉だけで見れば示している範囲が広すぎる。「情報管理ツール」と言うとデータベースっぽいイメージに寄っている感があるし、やっているのは「管理」だけではない。一般的なのは「ノートアプリ」だろうか。最近のものはもはや「ノート」のイメージからは大きく離れた機能がたくさん搭載されている感があるけれども。
……うん、面倒くさい! この名称検討は全く本質的ではない気がする。それらのアプリケーションをどう呼ぶかより、要するにデジタルツールに於ける手帳会議的なことを指したいということが重要だ。なので、いっそのこと「デジタル手帳会議」と呼ぶことにしよう。意味としては「『デジタル手帳』の会議」ではなく「デジタルの『手帳会議(的なもの)』」である。
Evernote、Workflowy、……が「デジタルな手帳」かというと、紙の手帳のイメージをそのまま持ってくるならそれはちょっと違うだろう。しかし、要するに自分の生活上で発生する情報をうまいこと扱うツールとして使われているのだという意味では紙の手帳と同じ役割を担っているし、「手帳会議」で手帳について検討していることと、デジタルツールの使い方について検討することというのは大体同じことをやっていると思う。
なので、まあツールの使い方を見直すにあたっては、その一連のことを「デジタル手帳会議」と呼ぶことにしようかと思う。