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2022-06-13

タイムライン型・カード型・デスクトップ型②~デスクトップ型~

 前回Logseqと自作のカード式アウトライナーをそれぞれ「タイムライン型」「カード型」としてはっきり使い分けることにしたという話をした。タイムライン型とカード型については、前回書いた以上に語るべきことは今のところ思いつかないので置いておくとして、今回はタイトルにあるもう一つの型、「デスクトップ型」ととりあえず名付けたものについて書く。


 デスクトップ型とはつまるところ何を指しているかというと、「ある目的のために、資料を集め、自分で考え、成果物を作る過程で用いるツール」というイメージのものである。仕事用の机の上にノートやファイルや書類や資料を広げて行う類の一連の営為を、デジタルでやろうとした場合に適しているであろうツールということだ。


 なお「タイムライン」「カード」「デスクトップ」の三語は語として指し示すものの種類がバラバラで全く揃っていないので、気になる人もいるかもしれない。

 モノで揃えるならば、「巻物、あるいはずっと書き続けている日記帳」「情報カードまたはルーズリーフ」「卓上のノート・ファイル類」といったイメージなのだが、仮に簡潔に書いたとしても、モノ基準にすると逆に揃っていない感じがする。一方、動詞や形容詞などで命名するとたとえ意味として正確でもイメージがしにくい感がある。

 よって、ここではイメージ優先で「タイムライン」「カード」「デスクトップ」と表記することにする。


 指し示したい像を明確にするために、先にそれぞれの型に対応するツールとして私がイメージするものを整理しておく。

  • タイムライン:Roam Research、Logseq(、Twitter)
  • カード:Evernote、Scrapbox、Obsidian
  • デスクトップ:アウトライナー全般、マインドマップツール、Officeソフト、(おそらく)Scrivener

 いずれも可能性の幅が広い万能なツールなのでどの役割も果たすことができるのであって、「他の用途に向いていない」ということを言いたいのではない。ただし万能な中にも「より得意なこと」があるはずで、その分類を試みるものである。Scrivenerについては、用途からしてそうだろうと思うものの私自身は触ったことがないので「おそらく」としている。


 ざっくり「アウトライナー全般」をデスクトップ型のツールとして配置しているが、アウトライナーというのは極めて万能なツールなので、自分で構造を定義しさえすれば、タイムライン型(日記など)としてもカード型(豆論文など)としても自由に使うことができる。ただ、「自分で構造を定義しさえすれば」というのは、正直なところ相当に難易度が高いことのように思う。絶えずそのことについて考えている人でもちょくちょく構造を改めていたりするし、文句のない正解というものに辿り着くのは容易でない。

 更に、万能で汎用性の高いツールであるということは「特定の用途に特化した便利機能」が無いということでもある。たった1ステップ2ステップでできる処理としても、そうする癖を自分に叩き込む必要があるとすれば、それはそれなりに大変なことだろうと思う。たとえツールの機能として搭載されている処理を実行するのと同じくらい手間が少なくても、そうする必然性というのがツールの側にあるのと自分の中にしかないのとでは、場合によっては認知資源の消費に少なくない差を生む気がしている。

 スクリプトを書ける人は、自分に習慣づけるのではなく「見ればわかる」形で処理を用意することも可能だろうが、そういう人が多数派とはとても思えないので、そのような高度な手段はとりあえず選択肢から外して考えることにする。(ちなみにそれができる人はDrummerというアウトライナーを使えば面白いかもしれない。)

 よって、ここでは一般的なアウトライナーを「タイムライン型」や「カード型」のツールとは見なさず、より適した用途である「デスクトップ型」として位置づけて考える。


 さて、はじめにデスクトップ型とは「ある目的のために、資料を集め、自分で考え、成果物を作る過程で用いるツール」を指していると書いた。

 最も重要なのは、何らかの目的があるということだ。仕事にしろ執筆にしろ勉強にしろ、目指す先がどこかにあり、そこに向けて進んでいくことになる(行き先が途中で変わることはあり得る)。そのために必要な資料や思索が如何に膨大であったとしても、目的に向けて進むためのどこかの箇所にはそれを位置づけることができるであろう。

 一方カード型ツールは、もちろん目的のために情報を集めたり思索して書いたりということはあるわけで、その意味でデスクトップ型ツールと密接に結びついているが、しかし常に目的があってカードを作るわけではない。使い途は決まっていないが重要なもの、というのが日々発生する。後から目的が定まって、このカードはその目的のために使えると判断されるパターンがとても多い。このことにより、どこにも位置づけない状態で保管・整理できる必要があるのである。


 目的に向かうためには、一度にできることはひとつである点で時間の流れというリニアな縛りへの対処を考えなくてはならない。一方で、何をしなければならないかを考えるには、同時に存在する物事や概念を俯瞰する必要もある。これを「縦の視点」と「横の視点」などとするとなんとなくビジネス感が漂うが、とはいえその二つが目的を達成するにあたり必ず要求されるものと思う。

 先にデスクトップ型ツールとしてアウトライナー全般、マインドマップツール、Officeソフトを挙げた。Officeソフトという括りは大雑把だが、ここでは要するに「視覚的にわかりやすい、『紙面』の概念のある資料を作るもの」として捉えている。A4紙に印刷するとか、縦横が決まった範囲にプロジェクターで表示するとかいうことだ。Excelは表計算ソフトであるから本来そういう用途のツールではないが、表の作りやすさゆえに書類作りに使われることも多いだろう。なぜExcelでそういうことをしたいかといえば、物事の認識のために何かのツールでそうする必要があるからである。

 アウトライナーは上から下へとリニアに並べるものなので、縦の視点での俯瞰に適しているだろう。その「上から下に並べる」ということに対してもし「リニア」ではなく「フラット」と感じるならば、必ずしもそこに順番を意識しないかもしれないが、意識的に順番をつけるとなればやはり「上から下に並べる」のが自然ではないかと思う。

 一方、同時に存在するものを俯瞰するにあたっては、視界に入る範囲を十分に生かして「面」の形にして横方向にも情報を配置した方がわかりやすいように思う。必ずしも紙面のように範囲を制限する必要はないが(そうした方がいい場合とそうでない場合がある)、ひと目で全体を見渡せるように情報を置くことによって俯瞰は可能になるだろう。

 例えばTransnoというアウトライナーでは、アウトラインからマインドマップを作ることができる。そこにある情報としては全く同じなわけだが、そのように配置を変えることで認識できるものが違ってくるのである。

 とはいえ、「上から下に並べる」ということや「視界に入っている」ということに対する感じ方というのは思いの外多様のようであり、絶対に「面」でなければならないという話ではない。アウトラインの形でも「横の視点」として普通に認識できる人もいるし、その場合はアウトライナーだけで全てを完結させられそうだ。

 アウトライナーの向き不向きも含めて語りたかったので少し話が煩雑になったが、重要なのは面かアウトラインかということではなく、何かの目的に向かって事を進めるならば、面にしろアウトラインにしろ「縦の視点」「横の視点」によって物事を俯瞰する必要があり、そのために私達は種々のツールを使っているということである。それは「タイムライン型」「カード型」の役割とは異なるもので、適切な既存のカテゴリがわからなかったのでこれを「デスクトップ型」とした。「プロジェクト型」とも言えたかもしれないが、先日タスクとプロジェクトを考えるでも書いたように「プロジェクト」という語自体が曖昧に感じるのでその呼称は避けた。

 

 こうしてみると、月並みな話ではあるが、「タイムライン型」「カード型」「デスクトップ型」はそれぞれ「現在」「過去」「未来」に対応しているようにも思える。「今まさに起きていること、今まさにやろうとしていること」のメモのためにLogseqを使い、「今までに知ったこと、考えたこと」の保管のためにScrapboxを使い、「これから成さんとしていること」のためにWorkflowyを使う、というような使い分けがあり得るのではないか。

 ひとつのツールでその全てをまかなうことも不可能ではなく、それができるだけの懐の深さを昨今の情報管理ツールはいずれも備えている。ただ、「今まさに」と「これまでの」と「これからの」というのは、同時にそれぞれから記述を取り出して考え事をするというようなことが頻繁に起こるため、ひとつのツールの中で行き来するより、一度に別画面でそれぞれを開いておけた方が便利のようには思う。それぞれに必要な処理も違っているので、それぞれ適した機能を持つものに担わせた方が楽に感じることもあるだろう。

 他方、情報の分散を防ぐためにひとつのツールにまとめようというのも至極合理的な判断であって、使い分けはすべきともすべきでないとも言えない。


 ただ、ツールを使い分けるにしろひとつにまとめるにしろ、そのツールで今自分がしようとしていることにはおそらく種類というものがあって(私の中のそれが「タイムライン型」「カード型」「デスクトップ型」ということである)、それを自覚していた方がツールの活用に於いて混乱は減るのではないか、と思っている。

 私個人の話をすると、前回書いたように「タイムライン型」と「カード型」をそれぞれLogseqと自作のカード式アウトライナーに担わせると決め、その結果少し前までメインに使っていたDynalistが暇になった。ずっと使ってはいるもののあれこれやらせすぎてどうにも使い方として納得できていなかったのだが、「タイムライン型」「カード型」の役割をDynalistから引き上げることで「デスクトップ型」の拠点としてスッキリと使えるのではないか、と期待しているところである。